【ブンセキLab.】手作り豆腐の「にがり1%」ってそういうこと!?―パックテストで探る美味しさの黄金比

ブンセキLab.
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夏場になると食卓への登場回数が増える「冷やっこ」。

実は、豆乳と「にがり」を使えば、電子レンジで簡単に手作り豆腐ができるのをご存知ですか?

豆腐づくりのレシピを調べてみると、「豆乳に対してにがりを1%入れる」という分量がよく推奨されています。でも、私たちはふと疑問に思いました。

「本当に1%がベストなの?」「そもそも、にがりの1%って『何が』1%なの?」

今回のコラムでは、ただ豆腐を作るだけでなく、ちょっとした好奇心から「にがりの量を変えたらどうなるか」を検証してみました。さらに、「パックテスト」を使って、豆腐が固まる謎と黄金比の正体に迫ります!

1.実験スタート!にがりの量で豆腐はどう変わる?

まずは、電子レンジを使った手軽な方法で、にがりの濃度を変えて豆腐を作ってみました。

①レンジ対応の容器に豆乳(100mL)とにがりを加え、泡立てないように均一に混ぜあわせラップをする
② 1つずつ電子レンジに入れて500wで1分加熱。
③ ラップをしたまま3分ほど蒸らす。
④ その後、追加で30秒加熱
⑤ 冷蔵庫で冷やす。

今回は、豆乳に対するにがりの割合を「0.5%」「1%」「2%」「5%」の4パターンで比較しました。

■実験結果:にがり濃度と豆腐の出来栄え

  配合割合外観食べた感想
にがり 濃度豆乳にがり1分加熱1分30秒加熱
0.5%100mL0.5mL全体的に固まっていないが、底に少し固まりが見える。 色は白っぽくなっている。変化なし全体的に固まっておらずドロッとしている。味は豆乳の味、わずかに塩味もある。
1% ★推奨濃度100mL1mL全体的に均等に固まっている。 色は白っぽくなっている。変化なししっかり豆腐になっている、市販の豆腐よりも豆の味を感じる。 塩味・あまみもある。
2%100mL2mL分離が見られる。部分的に固まっている。色が白っぽくなっている。茶碗蒸しのように細かな「す」が入っている。変化なしかなり塩味が強く、苦味を感じる。
5%100mL5mL全く固まらず、分離してザラザラした状態。変化なし塩味が非常に強い。

ここまでの気づき

やはりレシピ通り「1%」が一番おいしく、きれいに固まりました。にがりは入れる量が「少なすぎてもダメ」「多すぎてもダメ」で、うまく固まるためのストライクゾーン(ふり幅)が意外と狭いことが分かります。

2.なぜ豆腐は固まるの?

そもそも、なぜ豆乳ににがりを入れると豆腐になるのでしょうか。

調べてみると、豆腐が固まるのは、にがりに含まれる正電荷(プラス)のマグネシウムイオンやカルシウムイオンが、豆乳中に分散している負電荷(マイナス)の大豆タンパク質と結合し、網目状の架橋を形成してゲル状になるためだそうです(ちょっと難しい・・・・汗)。 つまり、豆腐づくりにおいて重要な働きをしているのは、にがりに含まれる「ミネラル成分(マグネシウムやカルシウムなど)」なのです。

今回はその中でも、にがりの主成分であり、豆腐の固まりやすさや味にダイレクトに作用している「マグネシウム」にスポットライトを当ててみました。

出所:https://kobeche.co.jp/dev_column_post/gdl/

3.パックテストの出番!「にがり1%」の正体を暴く

ここで、私たち共立理化学研究所の出番です!

主役がマグネシウムだと分かりましたが、今回実験に使った市販の「海水にがり」のパッケージには、肝心のマグネシウム含有量が書かれていません。  「いったい、このにがりにはどれくらいのマグネシウムが含まれているんだろう?」

気になったら測ってみるのが、ブンセキの醍醐味です。「パックテスト マグネシウム」を使って、にがりの中身を調べてみました。

測定の手順と結果

にがりの原液はそのままでは濃度が高すぎるため、純水で薄めて(希釈して)から測定します。

1.100倍希釈してみる:

純水100mLににがり1mLを混ぜ合わせました。これをパックテストマグネシウムで測ると、結果は「20mg/L以上」となり、かなり濃いようです。 

2.10,000倍希釈してみる:

先ほどの100倍希釈液1mLを、さらに純水100mLに混ぜ合わせました(トータル10,000倍希釈)。これを測ると、ついに標準色の「5mg/L」にピタリと一致しました!


10,000倍に薄めて5mg/Lだったということは、元の原液のマグネシウム濃度は……

5 mg/L × 10,000 = 50,000 mg/L (ppm)


これをパーセント(%)に換算すると、約5%になります。  つまり、今回使ったにがり原液のマグネシウム濃度は「約5%」だったことが分かりました。

■実際に使った豆腐のマグネシウムの濃度は?

ここで、最初の豆腐づくりに戻ります。
今回もっともうまく固まったのは、豆乳100mLに対してにがり1mLを加えたもの。
今回測定したにがり原液のマグネシウム量は5%。
豆乳100mLの中ににがり1mLが入っているため0.05%相当のマグネシウムが豆乳に入ったということになります。

にがり原液(5%)×1/100=0.05%

にがり 濃度豆乳にがり添加量マグネシウム濃度
原液 5%
0.5%100mL0.5mL0.025%
1% ★推奨濃度100mL1mL0.05%
2%100mL2mL0.1%
5%100mL5mL0.5%

4.「1%」だけ覚えても、同じ豆腐になるとは限らない?

すると「にがり1%がいい」というレシピの数字が、少し違って見えてきます。
ここが今回、一番おもしろかったところです。

最初は、「にがり1%でつくったら、一番おいしかった」

で終わる話でした。
でもマグネシウムを測ってみると、「にがり1%という数字そのものより、にがりにマグネシウムがどれくらい入っているのかが大事なのでは?」
という別の問いが出てきました。

にがりは、どの商品でもまったく同じ成分が入っているわけではありません。豆乳との組み合わせや加熱条件などによっても、固まり方も変わると考えられます。
なので、今回の実験だけで、「マグネシウムを0.05%入れれば必ずおいしい豆腐が作れる」と結論を出すことはできないのです。

さらに面白い発見もありました。今回作った2%以上の失敗豆腐は、とにかく「塩味」が強かったのです。これは、使ったのが「海水にがり」だったためと考えられます。
もし、塩分を取り除いた「精製塩化マグネシウム」を使えば、塩味の影響を抑えつつ、また違った硬さの豆腐ができるかもしれません。

また、調べていくうちに「にがりの他に、酸剤(酸性)を使っても豆乳は固まる」ということも分かりました。今度はにがりの代わりに酸を使って作ってみるとどうなるのか、新たな興味が湧いてきます。

5.測ってみると、次の「なぜ?」が出てくる

「レシピに1%と書いてあるから、1%入れる」

それだけでも美味しい豆腐は作れます。でも、「なぜ1%なのか?」「その中身はどうなっているのか?」と仮説を立て、実際に測って数字で確かめてみると、いつもの料理がまるで科学実験のようにワクワクするものに変わります。

パックテストというと、工場廃水や環境調査など「専門的でお堅いもの」というイメージがあるかもしれません。しかし今回のように、身近な食品や日常のふとした疑問を解き明かすためのツールとしても、実は大活躍するのです。

「こんな対象物なんだけど、測れるかな?」
「こんなものってどうなんだろう?と疑問に思った」

水のクセを知ることから、ブンセキはもっと身近になります。
身の回りのどんなものをパックテストで測ってみたいですか?